ふるさと生き物風景ツアーは、オオサンショウウオの生息地で有名な蒜山高原と大山の草原やブナ林をまわり、地元NPOが実施する草原生態系やギフチョウ、ヤマネ保護調査に参加し、霊峰大山の自然文化遺産や麓に広がる昔懐かしい農村の自然や風景を訪ね、名峰の旅を楽しみます。
協力:グラウンドワーク大山蒜山
国の特別天然記念物に指定されている別名ハンザキとも呼ばれる両生類の一種で、60年以上も生きる長寿な生き物です。涼しく、湿度の高い山地の谷川や水辺などがお気に入りで、蒜山高原や奥日野地域の川辺など、きれいな自然の中でないと生きていくことができません。夜行性のため昼間はなかなか見ることができませんが、雨の日や産卵期にしばしば姿を表します。
古くから日本の農村に生息する身近な生物として親しまれており、生物多様性を計るための重要な指標となる生物です。生息地であり、カをはじめとするエサ場でもある池や沼の減少により、絶滅が危ぶまれている種もあります。
森の木の上で暮らす、一属一種の日本固有種で、国の天然記念物に指定されている夜行性のほにゅう類です。リスやネズミと似ていますが、別の種類で、日本には数百万年前からすんでいるといわれています。花や果実、蜜など甘いものが好きで、トンボや蛾、カマキリなどの昆虫も食べます。
アテナ(ギリシャ)神の化身として、知恵、技芸の神、あるいは農業、森の守り神とされてきました。平地から山地にかけての森林に生息しており、夜行性のため昼間は樹の穴や木立の茂みなどで休んでいます。主にネズミやモモンガといった小型のほにゅう類や小型の鳥類、昆虫などを食べます。
グラウンドワーク大山蒜山
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ハンザキ(野生生物)をシンボルにした自然共生型地域づくり
オオサンショウウオは、個体そのものが国の特別天然記念物ですが、岡山県真庭市の旧川上村、旧八束村、旧中和村、旧湯原町は、その全域が「オオサンショウウオ生息地」として国の「天然物指定」を受けています。
全国でも、この「オオサンショウウオ生息地」として国の天然物指定を受けているのは、福岡県宇佐市、岐阜県郡上市、岡山県真庭市の3地域だけで、中でも真庭市での指定地面積は、32,800haを超えるという広大なもので、真庭市は世界一の「オオサンショウウオ生息地」とされています。
岡山県北部に位置する真庭地域は、特別天然記念物オオサンショウウオ生息地に指定されていますが、オオサンショウウオはそのグロテスクな容貌と、特別天然記念物という格付けにより、真庭地域住民にとって縁遠い存在になってしまい、その保護組織が育っていません。
一方、地域住民の「ふるさとの川」の「思い」は深く、農村において失われつつある清流環境(景観)再生への期待は大きいのです。
私たちの活動は、オオサンショウウオの生息する河川水辺について、昔懐かしい川の自然が残る河川区域や風情ある水辺の風景が残る環境を掘り起こし、清流景観を保全し再生する活動から、河川における生物多様性の保全に発展させ、そして、住民参画のオオサンショウウオ保護活動を促進することを目的にしています。
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オオサンショウウオは、世界最大の両生類で、限られた地域にしか生息していないということで、国の特別天然記念物に指定されています。
また、オオサンショウウオは、「生きた化石」と言われています。オオサンショウウオは、今から数千万年前からほとんど進化せずに生き続けていたとされています。岐阜県以西の日本と中国南部の四川省とアメリカ大陸東部に3種が生き残ったとされています。
昔は、動物性蛋白源となる魚や肉の入手が少なかったので、貴重な蛋白源として食用にしていた地方も多く、井戸や池の中に放すこともあり、蒜山地方では、「つかい川」でオオサンショウウオを飼っていたところもありました。 このようにオオサンショウウオは、昔から人々の暮らしとかかわりを保ちながら生きてきています。
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オオサンショウウオという名前は、地方によってはハンザキ、ハンザケ、アンコウ、ハザコなどと呼ばれています。ハンザキの語源は、半分に切り裂いても生きているように思えるところからきているといわれることもありますが、口が大きく、半分に裂けているように見えるからではないかとも言われています。また、一度かみついたら、雷が鳴ってもはなさないと言われています。
昔は、動物性蛋白源となる魚や肉の入手が少なかったので、貴重な蛋白源として食用にしていた地方も多く、井戸や池の中に放すこともあり、蒜山地方では、「つかい川」でオオサンショウウオを飼っていたところもありました。このようにオオサンショウウオは、昔から人々の暮らしとかかわりを保ちながら生きてきています。
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頭部にはイボイボがあり、ナマズのような体つきで、体にぬるぬるした皮膚をしていて、背面には、茶褐色に黒色の斑紋があります。捕らえたり、棒でつついたりして刺激を与えると、背面全体に白い粘液を出します。この粘液は、独特の臭いがあります。この臭いがサンショの臭いに似ていると言われることがあります。
体巾いっぱいの大きな扁平の頭部をしていて、前端に一対の鼻孔があります。口は、横に大きく頭部の幅いっぱいになっています。口の中には、1mmくらいの小さな歯があごの縁に沿ってたくさん並んでいます。さらに上顎の歯列の内側には、鋭い鋤骨歯があります。小さく分かりにくい目は、鼻孔の後ろ側面に近いところにあります。
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ハビタット(棲みか)は、隠れ家というのが適しているとされていて、岸辺の1メートル以上もあるような横穴や大きな石の下などに定住しています。産卵巣穴は、川岸の水中に開いた入り口で、入り口は小さく、奥は広くなっています。巣穴の奥に伏流水などの水が流れ込んでいるのがより快適な産卵巣穴とされています。また、渇水時でも巣穴は水面下となる場所です。
オオサンショウウオは、渓流の王者と呼ばれています。山地の谷川に生息している感が強いようですが、意外にも河川の中流まで普通に生息し、時に下流で発見されることもあります。生息地の条件としては、「水枯れしない隠れ家があること」、「餌となる小魚や昆虫類が生息していること」、「流れに淵や瀬があり、ある程度の水量があること」、「水温が高すぎないこと(とくに夏場の水温が25℃以上にならないこと)」が考えられます。
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オオサンショウウオの体の色は、茶褐色に黒色の斑紋が一般的ですが、全身真っ黒のものや黄色に見えるものまで個体変異は大きく、生息場所の川床の色に似た保護色になっています。孵化後、1年間は、黒色をしていますが、やがて茶褐色になり、小さな黒点が現れ、大きな斑紋となります。
足は、胴部の前後にあり、前肢には4本の指、後肢には5本の指があります。指には爪がなく、胴の両側面には、小さいひだがあります。尾は全長の3分の1近くあり、縦に扁平です。
オスとメスの区別は、外見では困難ですが、繁殖期にはオスは総排出口周囲をとりまいている線が肥大して隆起してくるので雌雄の判別が可能となります。
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オオサンショウウオは夜行性です。しかし最近では河川改修などで隠れ家がなくなり昼間に見つけられることも多くなっているといわれています。
隠れ家は川の側面にできたくぼみに多くありますが、大きな岩の下であったり、川に繁っている藻の蔭であったりするということもあります。
川の流れに直射日光が照りつけるようなところでは、水温が上がるので、川面を覆い被さるように樹木や竹藪が繁っている環境を好みます。
オオサンショウウオは、一ヶ所に塊まって生息していることはほとんどなく、テリトリーを保っていると考えられています。
4月頃から活動は活発になり、8月には産卵のための移動がはじまります。8月下旬から9月にかけて産卵し、10月を過ぎるとあまり隠れ家から出てこなくなります。オオサンショウウオは冬眠をしません。冬季は、水温が0度でも体温は4度あります。
夜、川へ出てきて餌を取ります。オオサンショウウオは夜行性の動物で昼間はあまり動きませんが、昼間でも目の前に来た動く物に対して採食行動を行います。
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自然林や雑木林の中を流れる清流域とその背後地をオオサンショウウオのサンクチュアリーとして保全することが必要とされます。
それでは、雑木林の下を流れる谷川では、どんな生き物が観察できるのでしょうか。
人の手が加わっていない自然の川岸は草が茂り木が根を張るなどして、洪水の度に石や土砂が流されて微妙に水辺の状況の変わることから、細かくみると複雑な形状となっています。こういった多様性のある環境がみられるのが、自然の川岸です。雑木林には多くの野鳥や小動物や昆虫が棲み落葉樹の側を流れる谷川には水生昆虫や魚の餌となる落ち葉や木から落ちた昆虫などが多く、それを求めてやってくるイタチやカワセミ、オニヤンマなど多様な生態系がみられるなど、自然観察の場としても優れていて、一部については、人の立ち入りを制限するとともに、環境学習やエコリーリズムに活用します。
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産卵期は、8月下旬〜9月。水温が20度以下になる9月上旬が最も多い。標高が高く、水温が8月でも20度以上にならないような河川では、8月中旬に産卵している場合があるとされています。
産卵場所は、岸辺に掘られた深い横穴など奥から伏流水が出るようなところが好適です。毎年、同じ穴で産卵することが多いようです。
繁殖行動としては、まずオスが産卵に適した穴を見つけ産卵できるように巣穴内をきれいにし、メスがやってくるのをまちます。他のオスがやってきたときは闘争が起こります。
産卵が終わると1頭のオスが巣穴に残り、卵を守ります。
産卵数は、1匹のメスは、300〜500、多いときは700個近くを産みます。卵黄の直径は、5〜8mmで20〜25mmのゼラチン質の保護膜で包まれていて、数珠のようにつながり、お互いにからみ合って一塊りになっています。
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孵化日数は、40〜50日で、全長30mm程の幼生が誕生します。誕生後は、幼生分散までの翌年の1月〜3月まで巣穴の中にいます。
その後、川へ分散し川底に流れ積もった落ち葉などの下に潜んでいます。この時の全長は4〜5cmになっています。幼生は、4〜5年かかって外鰓が退化縮小します。この頃の全長は20cm位になっています。
産卵期の闘争により四肢を咬みきられたりすることがあります。四肢の欠損はオスに多く、オスは闘争するがメスは闘争しないとされています。
オオサンショウウオの生態については未だ不明な部分が多く、とりわけ、オオサンショウウオ幼生についての確認例が少なく、幼生期にどのような環境に潜んでいるか明確にされていません。
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岡山県北部に位置する真庭地域は、岡山県三大河川の一つ旭川の上流域(源流含む)にあり、その河川域は国により「特別天然記念物オオサンショウウオ棲息地」の指定を受けいて、オオサンショウウオを頂点とする地域固有の生態系が維持されています。
調査は、オオサンショウウオの生息する河川水辺について、植生、水生生物の生息状況、河川形状、人の手の加わり方を調査し、生物多様性を把握することで、人とオオサンショウウオとの川を通じての係わりを解明し、河川生態系の保全を目的に「人と川との共生関係」や「河川工事における地域住民参加型の野生生物保護工法」を考えるにあたって必要な環境情報を収集するものです。
岡山県北部に位置する真庭地域は、岡山県三大河川の一つ旭川の上流域(源流含む)にあり、その河川域は国により「特別天然記念物オオサンショウウオ棲息地」の指定を受けています。
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本活動は、
@オオサンショウウオ生息に係るヒアリング調査、
A調査対象水域の選定、
B生息地の河川状況(人為的河川環境を含む)の調査、
C水辺自然環境調査
Dオオサンショウウオ・ビオトープの特性把握、
E河川(生物多様性)再生方策の提案
・・・という流れで進め、調査結果に基づき、オオサンショウウオを含む水辺野生生物の保護域を考察するとともに、地元自治体と地域住民を対象に2005年7月28日に現地見学会「オオサンショウウオ棲息地"蒜山の森"現地視察会」を実施しました。
聞き取りによると、旧川上村を流れる河川全体にオオサンショウウオの生息がみられるということですが、中でも、旭川本流には最も多く生息しているとのことです。
また、オオサンショウウオは水の冷たい所を好むとされ、湯船川や明蓮川、苗代川など北西部地域を流れる河川の上流域に多く生息しているという聞き取り結果も得られました。
一方で、水がきれいすぎても、エサになる魚が少ないので、かえってその生息が少なくなってしまうため、湯船川上流での生息個体は少ないという意見もありました。
また、蒜山インターチェンジの排水が流れ込む川、蒜山ハイツの排水が流れ込む目名木川あるいは、蒜山小学校やの中学校の排水の流れ込む河川はその生息にとってよくないとの意見もありました。
なお、オオサンショウウオの好物であるサワガニの多い所には、その生息は多いとされ、田部川の上流には、サワガニも多く、オオサンショウウオも多く生息しているとのことでした。
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旧川上村で自然の川の形態がよく残る場所は、明蓮川、湯船川をはじめとする北部と西部の渓流域や牧野の谷筋を中心に広くみられ、集落の近くを除き比較的自然に近い状態で、河川の環境が保全されています。
また、集落の近くでも、改修された護岸には、石積のものが多くみられ、その川辺にはバイカモやミゾソバなどの水辺の植物が生育しています。さらに、河川改修が進んでいる旭川でも、一部にブロック護岸がみられるものの、落葉樹林に被われた段丘崖などに自然の岸辺がよく残されていて、自然性豊かな川の風景がみられます。
なお、周囲に水田が開ける谷川では、水田へと水を引く頭首工が多く設けられ、魚類の遡上には支障があるものの、その岸には、石積の護岸が多くみられ、自然に近い状態で水辺の環境は保たれています。
しかし、村の南部を流れる河川では、三方コンクリートによる改修も進み、粟住川や田部川などの一部では、川の自然は失われています。
山地の渓流域では、砂防工事や治山工事がなされ、明蓮川、湯船川、白髪川などの上流域では、大きなコンクリート堰堤が建設され、堰堤がつくる止水域や湿地をみることができ、その上流には自然の野渓をなす渓流と自然林の環境がみられます。
聞き取りによる共通の認識は、八束村でもオオサンショウウオは、どの川にも生息していて、村内のほぼ全域に生息しているとのことでした。
近年、一時減少しかけていたオオサンショウウオも、少しづつ増えだしたようで、川の上流でオオサンショウウオの幼生(4〜5p)をよく見かけられるようになったとのことです。
また、八束村でもオオサンショウウオの産卵場所は、水のきれいな川の上流域でわき水が出ているところの下が多いとのことです。さらに、中谷川の上流や、井筒川の上流で産卵場所を確認をすることができたという具体的な情報も得られました。
基本的に河川の下、中流域は護岸改修がおこなわれていたり、中流域に落差工や砂防堰堤があるため、それぞれの河川の上流域の方に多く生息しているとの意見もありました。
また、民家、店舗等人工的構造物による排水の影響も、各河川の下流域にその生息が少ない原因としてあげることができるとのことです。
そして、どの蒜山三座の裾野を流れる、どの河川も村の中心部となる高原線より下流では、オオサンショウウオが減少してきているとのことです。
なお、この原因として、大根の生産が影響を与えているとの意見も聞かれ、雨で河川に流れ込む肥料の窒素と土砂の問題であるとして、特にその影響を受けているのが西部地域の玉田川と中谷川であるという意見もありました。
また、高松川はオオサンショウウオの生息に最も適した川なので、是非とも保存してほしいとの意見もありました。
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旧八束村で自然の川の形態がよく残る場所は、玉田川、上井川の上流域をはじめとする県道蒜山高原線以北の山麓域で、蒜山三座から発生する沢や谷筋を中心に広くみられ、集落から離れた渓流域で河川の環境がよく保全されています。
また、集落の近くでも、昔に改修された護岸には、石積のものが多くみられ、その川辺にはツルヨシやミゾソバなどの水辺の植物が生育しています。
さらに、河川改修が進んでいる旭川でも、一部にブロック護岸がみられるものの、落葉樹林に被われた段丘崖や川辺の湿原などに自然の岸辺がよく残されていて、自然性豊かな川の風景がみられます。なお、周囲に水田が開ける谷川では、水田へと水を引く頭首工が多く設けられ、魚類の遡上には支障があるものの、その岸には、石積の護岸が多くみられ、自然に近い状態で水辺の環境は保たれています。
しかし、村の南部を流れる河川では、三面コンクリートによる改修も進み、山城川や野田川などの一部では、川の自然は失われています。
また、裾野台地を浸食し、蒜山原へと流れ出る河川でも、旭川へと注ぐ下流域や中流域の一部がコンクリート護岸化し、河川の自然性は低下しています。さらに、山地の渓流域では、砂防工事や治山工事がなされ、三谷川などの上流域ででは、自然の野渓をなす渓流と自然林の環境がみられるものの、大きなコンクリート堰堤が建設され、渓流の生態系は分断されています。
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旧中和村でもオオサンショウウオは全域の河川に生息しているとのことで、旧八束村と比較しても生息環境は、中和村の方がよいという意見がありました。
また、オオサンショウウオは、水の冷たくきれいな上流域を好むので北部地域に多く生息し南部地域になるほど、その生息は減少するという意見もありました。
また、村の南東部を流れる植杉川や山乗川などの渓谷をなす河川には中流域に、大きな砂防堰堤や滝があるため、オオサンショウウオの遡上ができなくなり、それより上流にはほとんど姿をみることができないとのことです。しかし、ダム湖にはかなりの体長の大きなものがいると予想され、その個体数も多また、生息状況からみて中和村では、ヒノキやスギの植林地木の多い谷には生息が少なく、広葉樹林の谷の方が多く生息しているという意見もありました。旧中和村で自然の川の形態がよく残る場所は、丘陵の間を蛇行して流れる旭川の川辺と、山乗川、植杉川などの渓谷域で、初和川でも荒井付近など山地の間を渓流となって流れる場所では、自然に近い状態で、河川の自然が残されています。
周囲に水田が開ける津黒川や山乗川などの谷川では、水田へと水を引く頭首工が多く設けられ、魚類の遡上には支障があるものの、その岸は、地山や土羽となって梅やスモモが植えられていたり、石積で護岸がなされるなどして、自然の川に近い状態で川辺の環境は保たれています。
また、集落の近くでも、昔に改修された護岸には、石積のものが多くみられ、その川辺にはセリやミゾソバなどの水辺の植物が生育しています。さらに、河川改修が進んでいる下和川でも、一部にブロック護岸がみられるものの、昔に石積で護岸化した場所では、植生も回復し、生態系の豊かさを感じさせる川の風景がみられます。
一方、近年、道路の新設や拡幅、河川工事、圃場整備などによって護岸が改修された場所では、ブロック護岸やコンクリート護岸によって河川の自然は損なわれています。このような場所は、下和川や植杉川の水辺を中心に水田域に多くみられます。とくに、村の北部を流れる下和川では、三方コンクリートによる改修も進み、別所や常藤などの一部では、川の自然は失われています。
また、山地の渓流域では、砂防工事や治山工事がなされ、津黒川の上流域、初和川では、大きなコクリート堰堤が建設されているため、川の生態系は分断されています。
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旧湯原町内を流れる各河川は、比較的急峻な地形を呈した山地部の谷筋と、面積は少ないものの旭川沿いやその支流周辺に平野部もみられます。オオサンショウウオは以前から繰り返し、山間の谷川で産卵して孵化した後に、その本流や旭川に下って生活していたとのことです。
当地域は平野部の少ない地形的な条件から、以前は多くの個体が広く生息分布していたとのことであったが、平野部を生活の場として、また山間部を産業活性の地として利用する人間との共存が問題となってきているようです。このため、山地の植林化や河川の改修、農地の改変などの影響によって、現在では上流と下流の遡行を阻害する構造物の出現による分断や生息環境が減少し、生息域と個体数が共に減ってしまったとのことです。
現在の旧湯原町でのオオサンショウウオの生息状況としては、旭川では大型の個体が多く湯原ダムを含む全域で生息が認められ、その支流の比較的流域面積が広く自然の野渓を維持している鉄山川、粟谷川、藤森川、田羽根川には多くの個体が現在も生息しているとのことでした。
また、これらの支流においては、比較的谷筋も小規模な上に地形が急峻で段差もみられ、近年の人為的な植林や農地の改良などによって、河川の形質が改変されて遡上を阻害する構造物の設置や産卵地の消失などによる生息環境の悪化が進んでいるとのことであり、小数の個体が限られた地域でのみ産卵活動を行っているに過ぎないとの情報でした。
当地の地形的な面からは、旭川下流の仲間川、大庭皿川、峪谷川、大滝川、大谷川(都喜)、向井谷川などには以前からオオサンショウウオの生息が認められていないようでした。さらに、各地域に残るタタラ製鉄跡の影響によって生息が認められなくなってしまったという情報も日尾谷川などから入手できました。
このほかでは、生息や遡上が阻害される現状の中で、河川改修が行われて生息情報が途絶えてしまった社川水系とは逆に、釘貫川などではオオサンショウウオが遡行可能な河川構造への配慮として、河床に自然石を使用したり、堰堤に遡上が可能な魚道を設置するなどの配慮もなされているとのことでありました。旧湯原町は、昭和56年7月に集中豪雨にみまわれ、激甚災害の指定を受けています。このため、町全域において災害復旧工事が行われ、護岸の改修が進められてきました。
湯原町で自然の川の形態がよく残る場所は、東部の山地を流れ下る白根川、古屋川、向井谷川などの渓谷域や、町の北西部を流れる粟谷川上流の渓流域で、ここでは自然に近い状態で、河川の形態が残されています。
周囲に水田や集落が開ける粟谷川や鉄山川などの河川では、一部はブロック護岸など改修がなされているものの、岸の片方は、地山の斜面となっていたり、土羽や石積で護岸がなされるなどして、自然の川に近い状態で川辺の環境は保たれています。なお、昔に石積で護岸をした場所では、植生も回復し、生態系の豊かさを感じさせる川の風景がみられます。
また、旭川でも河畔を走る国道の対岸に自然の岸が残り、清流らしい川の景色をみることができます。
一方、近年、災害復旧による水路の改修や、道路の拡幅、河川の改修工事などによる護岸の改修がなされた場所では、ブロック護岸やコンクリート護岸によって河川の自然は損なわれています。このような場所は、田羽根川や社川、三倉谷川など集落域近くに多くみられます。とくに、藤森川、山田川、三倉谷川、竹谷川、五市谷川など災害復旧で、三面コンクリートによる改修が進んだ河川では、川の自然は失われています。
また、山地の渓流域では、砂防工事や治山工事がなされているほか、高速道路の建設による大規模な地形の改変がなされ、谷川の生態系は分断されています。
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オオサンショウウオ生息地保全に向けての組織づくりや環境保全対策については、地元自治体(真庭市環境課)や地元教育委員会(真庭市文化財課)と協議を行っているほか、オオサンショウウオ保護の全国ネットワーク大会に加盟参加し、情報交流を行っています。
「特別天然記念物オオサンショウウオ生息地生物多様性調査」を実施する中で、鳥取大学蒜山演習林「蒜山の森」の中を流れる谷川(苗代川)及びその背後地となる森林域(コナラ林、ミズナラ林、ブナ林)が生態系保全区(サンクチュアリー)の候補地の一つとして評価された。
この区域は、面積にして400haを超える森林渓流域であり、オオサンショウウオやクマタカを頂点とする良好な生態系が残されていると考えられました。
調査結果に基づき、オオサンショウウオを含む水辺野生生物の保護域を考察するとともに、地元自治体と地域住民を対象に2005年7月28日に現地見学会「オオサンショウウオ棲息地"蒜山の森"現地視察会」を実施しました。
評価結果をもって鳥取大学および地元真庭市教育委員会に協力を求めたところ、生態系保全区(サンクチュアリー)の指定および調査協力のみだけなく、伝統的な自然工法による自然再生工事など保護対策事業や環境教育事業についても協働での取り組みが可能となりました。
さらに、本調査研究を踏まえ、オオサンショウウオを含む河川生態系の保全について、地元自治体(真庭市)とも協議していて、環境基本計画策定でも検討してもらいたいと考えています。
オオサンショウウオの生態については未だ不明な部分が多く、とりわけ、オオサンショウウオ幼生について確認例が少なく、幼生期にどのような環境に潜んでいるか明確にされていません。
従来、オオサンショウウオの保護は、河川域での成体の移動路(遡上路)と営巣地の確保を中心に進めてられてきたが、本調査において、幼生の生息環境は、山間水田脇の小水路などドジョウやメダカなど生息する水辺環境である可能性が示唆されました。
今後、オオサンショウウオの生息環境の保護をはかるためには、河川域・渓流域のみならず、周辺水田域や隣接樹林域においても、生物多様性の保全が求められていて、今後は、オオサンショウウオ幼生期の生態を解明し、農地・農業用水路においても保護対策を検討していくことが必要とされています。
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中国山地の山間(岡山県真庭市)を流れる旭川とその支流には、清流を中心に集落が形成されていて、人と川との生活の中で関わりを感じさせる風情ある水景色がみられ、そこには太古の昔より特別天然記念物オオサンショウウオが広く生息しています。
オオサンショウウオの生息環境となる緑豊かな川の自然を保全再生していくことで、旭川河畔の集落において、清流の自然と共生した静かなで美しい住環境が保全されることが期待されます。
真庭遺産研究会では、平成11年以降、真庭地域北部を流れる河川について、河川構造物の状況について調査し、オオサンショウウオ繁殖状況の情報を収集するとともに、地元住民より今と昔の河川環境の変化について聞き取り調査を実施し、伝統的河川土木工法や昔見られた淵、河畔林などを検証しています。そして、平成14年9月、11月に郡民を対象に環境セミナーを開催し、オオサンショウウオの生息状況など中心に河川環境についてその現状と望ましい「ふるさとの川」の現状について報告しています。
旧川上村は旭川の上流域に位置し、地域を流れる河川としては、旭川をはじめ、その支流の明蓮川、湯船川、田部川、内海谷川、天谷川、苗代川、白髪川、熊谷川、粟住川などがあげられます。
これら山地に源を発した旭川の支流は、火山性台地の谷筋や山麓の牧野を緩やかに流れ、蒜山原を流れる旭川へと注ぎます。
とくに、内海谷川、天谷川、苗代川など、北部の火山性の台地域を流れる旭川の支流での河川勾配は小さく、クロボコと呼ばれる火山灰に覆われた台地を長い距離で浸食し、浸食崖を形成しながら蒜山原へと流れ出します。
村が旭川の源流域にあたるため、平野をゆったりと流れる川幅の大きな河川の水辺はみられませんが、蒜山原を流れる旭川では、瀬と淵、ワンドや中州が形成され、生態系の豊かさを感じさせる川辺の景観が形成されています。
なお、旭川の河畔には、蒜山原を流れる旭川の景観を特徴づける地形として河岸段丘がみられ、旭川の岸辺には高さ10〜20mの段丘崖が形成されています。
また、川上村には、海抜1,159mの皆ケ山を最高峰として、擬宝珠山、三平山、朝鍋鷲ケ山などの山地が連なるが、村全体の標高が高く、比高差1,000mを超える急峻な山地や山岳地帯は存在しないため、大山の放射谷にみられるような降雨時にのみ表面を水が流れる沢はほとんどみられません。
旧川上村の土地利用は、渓流域をなす山地が山林、台地上や山裾が牧野、その谷筋は原野や農地となっていて、蒜山原に出ると河川の周囲には水田や集落が開けています。
北部西部の渓流域に広がる山林の多くは、コナラやミズナラ、サワグルミ、トチノキなどからなる落葉樹林で、湯船川や苗代川の源流域には自然性豊かなブナ林の環境もみられます。一方、南部の山地では比較的スギ・ヒノキの植林が多くみられ、そこを流れる谷川の周囲には、自然性が低下した薄暗い森林の環境もみられます。
放牧場や高原野菜畑の景観が広がる山裾の牧野についてみると、朝鍋山麓を流れる渡瀬川の谷川に沿ってトチノキやサワグルミなどからなる渓畔林が帯状に残されていて、渓流の自然が保全されています。
また、鳩ケ原と呼ばれる古期大山の台地上や茅部野、郷原の段丘面上には、ダイコン畑や牧草地、飼料畑などの高原畑の風景が広がっていて、その谷筋には、天谷川や内海谷川、宿波川などの水辺がみられ、ハンノキやヤナギが疎林をなす湿地も形成されています。
このように、火山地形が広く分布する川上村では、蛇ケ乢湿原をはじめとして、鳩ケ原の谷筋などに湿地が形成され、ミツガシワやヌマガヤ、モウセンゴケ、イワショウブなどの湿生植物の生育する湿原の風景もみられます。
これら火山性の台地を深く浸食して流れる苗代川や宿波川、天谷川では、水辺がツルヨシやチシマザサに覆われ、人が踏み入ることも困難な状況となっています。
一方、水田風景が広がる蒜山原に目を向けてみると、旭川をはじめ、明蓮川や内海谷川などの河川には、ツルヨシが茂る河原や中州、ワンド域が形成され、生き物が多く棲んでいそうな水辺の景観がみられるほか、バイカモが川面にゆれる蒜山地域ならでは川辺の風景もみられます。
また、旭川の周囲に開けた水田域には集落が散在し、集落内を流れる水路では、オオサンショウウオの姿をみることもできるといわれています。
なお、旭川の河岸には段丘崖がみられるが、段丘崖の高さはおおむね10〜20mで、コナラやヤマザクラなどからなる落葉樹林となっていて、段丘面上はダイコン畑やススキ野原、カラマツの点在する牧野が開けています。このような流域の土地利用が起因し、蒜山原を流れる旭川の川底には、土砂がヘドロ状に堆積し、有機物による水質の汚濁や富栄養化が進んでいるとされています。
旭川の支流となる備中川などでは、6月に多くゲンジボタルの発生を観察することができる。ゲンジボタルは、日本特産の種で成虫は体長12〜18mmぐらい、体色は黒色で鈍い光沢があり6月〜7月に出現し、清流近くの林地でみられます。幼虫は清らかな水の流れる環境に生息し、水生巻貝のカワニナを捕食して育つ。分布は本州、四国、九州で、県内でも山間の清流を中心に広く分布しているものの、近年、河川水の汚濁や護岸工事による生息域の消失が進み、生息域と個体数がともに減少しました。
また、真庭地域の南部を流れる備中川などでは昔はアユモドキやオオサンショウウオの姿をみることができたと聞きます。
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旧八束村は、旧川上村と同じように、旭川の上流域に位置し、村を流れる河川としては、旭川をはじめ、その支流の玉田川、中谷川、上井川、三谷川、宇田川、戸田川、宮城川、戸谷川、高松川、山城川などがあげられます。
これら山地に源を発した旭川の支流は、蒜山三座の裾野に発達した谷筋や麓の農村域を瀬となって流れ、蒜山原を流れる旭川へと注ぐ。玉田川をはじめ、中谷川、上井川など、蒜山三座の裾野域を流れる旭川の支流での河川勾配は小さく、これらの川は、クロボコと呼ばれる火山灰に覆われた裾野台地を浸食し、蒜山原の水田域へと流れ、旭川と合流します。
村が旭川の上流域にあたるため、川幅の大きな河川の景観はみられないが、蒜山原を流れる旭川では、瀬と淵、ワンドや中州が形成され、生態系の豊かさを感じさせる川辺の景観が形成されています。とくに、太古の時代に大きな湖であった蒜山原の水田農村域を大きく蛇行して流れる旭川の水辺には、川岸にツルヨシやヤナギの生える湿地帯が形成され、自然性豊かな河川の風景をみることができる。
なお、旭川の河畔には、蒜山原を流れる旭川の景観を特徴づける地形として河岸段丘がみられ、旭川の岸辺には高さ10〜20mの段丘崖が形成されています。
蒜山三座に源を発する谷川の上流域には、渓流の環境がよくみられ、中蒜山の麓に位置する塩釜では、とうとうと湧水が流れ出しているほか、蒜山原に注ぐ上井川や三谷川などの上流に渓流域が形成されています。
しかし、村内に大きな落差をもって流れる急流や瀑布はみられない。また、急斜面に挟まれた深い谷がみられる場所は、蒜山三座の渓流域に限られ、中和村、湯原町にみられるような峡谷や渓谷は発達していない。一方、火山地形が広く分布する八束村では、谷筋や山裾に湧水がみられ、犬挟峠の湿原や東湿原をはじめ玉田川、中谷川など蒜山三座山麓の谷筋や山裾などに小規模な湿地が形成されています。
八束村の北部には、海抜1,200mの上蒜山を最高峰として、中蒜山、下蒜山からなる蒜山三座がそびえていますが、火山性の山地であるため、ここに降った雨は浸透し、伏流水となって麓に湧出します。この代表的なものが塩釜の湧水であり、湿地もこのように伏流水が湧く場所によく形成されます。
旧八束村の土地利用は、基本的には旧川上村と同じで、渓流域をなす山地が山林、台地上や山裾が牧野、その谷筋は原野や農地となっていて、蒜山高原に出ると河川の周囲には水田や集落が開けています。蒜山三座の渓流域に広がる山林の多くは、コナラやミズナラ、サワグルミ、トチノキなどからなる落葉樹林ですが、上井川や三谷川の上流域では、水辺がツルヨシやチシマザサに覆われ、人が踏み入ることも困難な状況となっています。
一方、南部東部の丘陵地では比較的スギ・ヒノキの植林やアカマツ林が多くみられ、そこを流れる谷川の周囲には、里山の環境もみられます。
放牧場や高原野菜畑の景観が広がる蒜山三座の山麓についてみると、上蒜山から発生する沢では、細流に沿ってトチノキやミズナラなどからなる渓畔林が帯状に残されていて、渓流の自然が保全されています。
また、百合原と呼ばれる上蒜山の火山麓扇状地上には、放牧場や牧草地などの牧野の風景が広がっていて、その谷筋には、玉田川や中谷川などの水辺がみられ、ハンノキの疎林やミズゴケ、コオニユリ、ノハナショウブが生育する湿地帯も形成されています。
このように、村の北部に火山性山地がそびえる八束村では、犬挟峠の湿原や東湿原などにミツガシワやヌマガヤ、モウセンゴケ、イワショウブなどの湿生植物の生育する湿地帯がみられるほか、蒜山三座から発生する沢や谷筋に小規模な湿地が形成され、湿生樹が疎林をなす湿原の風景もみられます。
蒜山三座に源を発する河川は、裾野の台地を浸食し、蒜山原の水田域へと流れ出る。裾野台地の上にはダイコン畑や飼料畑、ススキ野原が開け、河川は浸食崖の下を流れます。この浸食崖はコナラやヤマザクラなどからなる落葉樹林に被われた斜面となっていて、林床はシマキザサが覆っています。崖下を流れる川の水辺には、ツルヨシが茂り、その周囲にはススキ草原や水田がみられます。
また、田園風景が広がる蒜山原に目を向けてみると、かつて大きな湖であった蒜山盆地の平野を流れる旭川では、ツルヨシの茂る河原にワンドや中州が形成され、生態系の豊かさを感じさせる川辺の景観が形成されています。
ヌマガヤオーダー・ヨシクラスの湿地帯は、旭川の水辺にもみられ、花園から宮田あたりにかけての水田農村域を大きく蛇行して流れる旭川では、川岸にツルヨシやヤナギの生える湿地帯が形成され、自然性豊かな河川の風景をみることができます。
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